サファイア
19世紀頃,「宝石名」を女性名に転用するのが英語圏で流行した。Beryl, Emerald, Diamond, Opal, Pearl, Ruby
などが次々と女性名に転用された。
このうち Pearl はかなり一般化した。これはナサニエル・ホーソンの『緋文字』の中で使われたことが影響したらしい。また Pearl は Margaret (♀) の愛称として使われた。Margaret はギリシャ語で「真珠」の意を持つ名だからである。
その他の宝石転用名で比較的定着したのは Beryl, Emerald, Ruby だが,Ruby は20世紀末頃までには廃れた。Sapphire
は転用当時から今に至るまで大して使われていない。
英語 sapphire の語源はヘブライ語で「サファイア,瑠璃」を指す言葉である。このヘブライ語が語源の女性名もある。新約聖書の「使徒行伝」に登場する
Sapphira がそれだ。
Sapphira (サッピラ)は「嘘をついて神罰を受け,夫アナニア (Ananias) と一緒に急死した」女性。
Sapphira を説明した辞典がないので,使用状況の推移等は全く不明。しかしエピソードの縁起の悪さから考えると,頻繁に命名に使われたとも思えない。おそらく「聖書中の古名」として存続はしたが,実際に使われる名ではなかったような気がする。
Sapphira が聖書中で(おそらく)放置されている間,「瑠璃」の意の言葉は言語を乗換えながら変遷していった。
(ギリシャ語 sáppheiros →ラテン語 sapphīrus →古仏語 safir →英語 sapphire )
そして19世紀,英語の宝石名 sapphire が人名転用され,「女性名 Sapphire 」が誕生した。それ以後 Sapphira と Sapphire
は「同じ名の綴り字違い」と見なされ始めたらしい。
LR (1963) は Sapphira の項で,
Modern usage from Willa Cather novel, Sapphira and the Slave Girl.
と書いている。検索によればこの小説の出版年は1940年,そんなに過去のことではない。
昨日,本棚から朝日ソノラマ『リボンの騎士』(昭和42年5月1日・定価300円)を発掘。「朝日ソノラマ」というのは「ソノシートを添付した薄い小冊子」である。テレビアニメのセル画を撮影したと思しき画像とか,新人アニメーターが描いたようなド下手なバッタもん風人物紹介イラストとかが載っている。
アニメ版はよく見ると結構絵が酷いな……
このサファイアはなかなか華美だな。多分原画そのままのトレスなんだろうな……
などとページをめくり,最後のページに到達。広告を見て驚いた。
*いま大評判の「悟空の大冒険」をマンガで読もう !!
月刊コミックマガジン COM
手塚治虫・石森章太郎・永島慎二・出崎 統先生などの傑作がいっぱい!
本屋さんで直接手にとってごらんください。
発売■毎月20日 定価■150円 発行■虫プロ商事
出崎統は漫画を描く人だったのか!
アニメの演出の人だとばかり思っていた。
[2008/3/7]
Copyright (C) 2008-2022 S. Sonohara, All rights reserved.