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Chloe (♀) F.

--GR--
☆聖書人名

[Greek] a young green shoot /「緑の新芽,若枝」

[English] Chloe, Chloë
[French] Chloé
[架空人名] 『ダフニスとクロエ』のクロエ

古代ギリシャ語 χλόη (Khloe) [語意 a young green shoot /緑の新芽,若枝] に由来。
 χλόη はギリシャの豊穣女神デメテル (Demeter) の添え名,通称であった。
 χλόη は古代ギリシャ語 χλωρός (Kloros) [語意 greenish-yellow, pale green, fresh /緑がかった黄色,淡緑色,新鮮な] と関係のある言葉で,χλωρός の語源を遡ると「光り輝くこと,(転じて明るいもの,金色のもの)」の意を持つ印欧語根に到達するとされている。
 また χλωρός からは英語の接頭辞 Chloro- が出ているが,これも「緑」の意味がある。

古代ギリシャの恋愛物語『ダフニスとクロエ』(Δάφνις και Χλόη /Daphnis and Chloe) のヒロインの名であり,新約聖書「コリント人への第一の手紙」に登場する名でもある。(ただし突発的に一度だけ使われていて,Chloe がどういう人物なのかは不明)

17世紀の清教徒たちが「聖書」から Chloe を引用して命名したことから英語名としての使用が始まった。(清教徒は聖書に記載された人名から子供の名をつける傾向があった)

 しかしGRS (『アメリカ人名辞典』1980/*原語版は1979年出版)に,

Aunt Chloe (クローイおばさん) と呼ばれるように,きまって黒人の使用人に名づけられたが,その理由は不明である。20世紀に入ってまれな名前となった。

 とある。この「命名」が奴隷制時代の話なのか,奴隷解放以後の話なのかはっきりしないが,解放以後の話としても「主人に呼称を勝手に決められる=黒人の地位が低い」時代の事例と思われる。
(奴隷制時代を背景にしたストー夫人の小説『アンクルトムの小屋 (1852)』では主人公トムの妻の名が Chloe である。)
 つまりアメリカには Chloe が「社会的立場が低い黒人」用の名前だった時代が存在したし,『アンクルトムの小屋』が読まれ続ける以上,Chloe には黒人奴隷のイメージがつきまとったのかもしれない。

しかし2015年現在,Chloe はアメリカで結構な人気名らしい。
 ランキングサイトで年度別の統計を見ると,1995年あたりから使用が急増し始めたようだ。(そのランキングサイトのデータが正確かどうかは不明)
 その頃にクロエ・セヴィニー (Chloë Stevens Sevigny) という有名人が活動を開始しており,彼女の存在が Chloe の人気を上昇させたのかもしれない。Wikipedia によれば彼女はアメリカ育ちだがヨーロッパ系の両親を持っている。

フランスには Chloé という1952年創業の名門ファッションブランドがある。多分ヨーロッパにはアメリカのように Chloe に「良くないイメージ」はない。

[カナ表記/原語でのアクセント位置参考]

Chloe (♀)
[カナ/English] クーイ
[発音近似カナ/English] クイ,クウイ
[カナ/English (慣)] クロエ

Chloé (♀)
[カナ/French (慣)] クロエ

*発音サイト Forvo のデータを聞くと,英語・フランス語共に「クウィ」あたりに聞こえる。

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