■黄昏の名前と誤植と思われるもの
私が風邪をひく時は,大抵喉から始まる。
先週水曜午後から喉が痛くなり,市販薬とのど飴で誤魔化しながら仕事をして,今日の土曜は静かに過ごした。
最近朝7時半~8時頃にはかならず「アルケミアストーリー」のシュリンガー公国で「無差別辻いいね」をして回っていたのに,今朝は起きられなくてサボってしまった。
昼頃に酒場クエストでデュロック戦をした程度で,あとは特に何をするでもなく一日が終わりかけて18時半。
ふと手元にある「イソジンのど飴」の袋を見たところ,「ヘスペリジン」という文字列が目に入った。
これは多分ヘスピリデスあたりが元なんじゃないだろうか。
そう思って検索したら,やはりそうらしい。
ヘスピリデスは「黄金のリンゴを守りながら西の果てに暮らす」ニンフたちの総称で,語意は「宵,西方」。
宵の明星神 Hesperus の孫娘にあたる。(他の説もある)
ギリシャ神話中の神名・人物名は職分や性質などが「そのまんま名前」になっていることが多い。
当サイトの人名辞典には▼マーク付きで Hesper, Hespera, Hesperia という英語女性名を記載している。なぜ▼マークつきなのかというと,「あんまり信用がおけない赤ん坊命名本」には記載があるが,まともな人名辞典では見かけない名だからだ。
実際の使用例があるのかないのか不明な,「収録数を稼ぎたい命名本の水増し用人名」である可能性が高い。
しかしそういう名前も「RPGの命名用」とか「趣味のラノベ作文用」とかにはそれなりに使えると思い,▼マーク付きで載せている。
ところで今日 (2019/7/13) ,Wikipedia の「ヘスピリデス」の項を読んでいて「ん?」と思ったことがある。
ヘスピリデスのリストの中に,「ヘスティア」(炉の女神。語意はそのまま『炉』)が含まれているのだ。
炉の女神とリンゴを守るニンフは無関係な気がするが,16世紀の学者がそういう説を書いたらしく,一説になっているようだ。
手持ちの羅和辞典には,
Hesperia 「宵の明星神の国,すなわち西方の国,すなわち Italia (時に Hispania)
Hesperiē Troia の河神 Cebren の娘.
Hesperis 「西方の」
Hesperius 「宵の明星神の,西方の」¶ terra Hesperia イタリア.
Hesperus 「宵の明星神」
といった項目が並んでいる。
また,検索によれば hesperidium (ミカン状果) は「カール・リンネがヘスピリデスの黄金のリンゴに因んで名付けた」らしい。そして hesperid- から作られた言葉が hesperidin (ヘスペリジン) のようだ。
ああ,よく見れば羅和辞典にも hesperidium の項があるなあ……
いや。ちょっと待て。
herperidium になってるぞ! sがr になってる!
これは,誤植……に見える。
私の持っているのは 2000年11月発行の第34刷であり,現在は「改訂版」が出ているらしいので,きっと今では直っている……と思う。
のど飴の袋から羅和辞典の誤植(と思われる)に当たるとは思わなかったな。
[記] 2019/7/13
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