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平たい顔族のディアナ


 割と有名な漫画らしいのだが,最近某巨大掲示板のスレッドを見て,初めて「テルマエ・ロマエ」を知り,早速買って読んでみた。
 その当該スレッドでは,「4巻」の評判が滅茶苦茶悪いので,とりあえず1~3巻を読み,その後で4巻を読んだ。つまり,1~3巻までにこの漫画の読者になっていた人たちと同じ感覚で4巻を読んでみようとしたのだ。

 1~3巻は単行本1冊の中に2,3回の起承転結があり,「桃太郎」的である(異界の宝を持ち帰って成功する)。
 しかし4巻には「結」がない。そしてファンタジーの質が変わっている。最終的に「浦島太郎」になるのか「かぐや姫」になるのか別の何かになるのかわからない,中途半端なところで終わっている。確かにこれは読んでスッキリしない。多分このあたりが昔からの読者の反感を買ったな,というのがわかった。

 が,私は4巻の内容自体には特に文句もない。プロジェクトXを見ていたら突然ラブストーリーが展開されたような気分ではあるが,そういう話もいいと思う。

 ただ,変だと思った点が一つある。
 4巻登場の女性の名「さつき」。
 漢字なら「五月」または「皐月」と書くであろうと日本人なら想像する名前だ。
 古代ローマ人の主人公ルシウスは,彼女を「ディアナ」と呼ぶ。
 だが,さつきはそう呼ばれても全く気にせず,当然のような顔をしている。
 さつきはインテリなので,ディアナが月の女神の名であることを知っているはずだが,神の名で呼ばれても動じないとは,どういう神経なんだろう。
 普通は気恥ずかしくて耐えられないし,自分の名前は「さつき」だと訂正しそうなものだが……

 古代ローマでは名前のわからない独身女性を「ディアナ」と呼ぶ慣習でもあったのか?
 それとも「さつき」は,自分の名前に「月」が含まれているから,ルシウスがそれを「月の女神」にラテン語変換して呼んでいる,という認識なのか?
 しかし「さつき」はルシウスに一度も名乗っていないし,名の意味を説明してもいない。

……でも,すっ裸で女湯(の時間帯)に乱入し,「私はローマ人だ」などと宣言している外国人の男に対応するとしたら……相手が間違った名で呼んで来ても,とりあえず好きに呼ばせておくかな? わざわざ余計な刺激を与えたくないもんな。

 ところでルシウスのフルネームは「ルシウス・クイントゥス・モデストゥス」(Lucius Quintus Modestus) だそうだ。
 quintus には「第五の」という意味がある。

 Quintus の――「第五の」――「月の女神」→「五」・「月」→「さつき」

 もしかすると彼女の名は「ルシウス・クイントゥスにとっての月の女神」という意味になるように設定されたのかもしれない。

→ Lucius / Quintus / Modest


[記] 2012/1/7


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