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薔薇の名前
Rosalind, Rosamond, etc.


 ラテン語 rosa を知っていると,Rosalind, Rosamond を「薔薇に関係する名前か」と思ってしまう。
 しかしこれらはゲルマン語由来である。語意解釈が何種類かあってはっきりしないが,ラテン語 rosa (薔薇)と無縁という点は動かない。

◇Rosalind(ロザリンド)

 区切りとしては rosa-lind である。
 前半要素の語源として古代ドイツ語 (h)ros (語意 horse),古代高地ドイツ語 hruod (語意 fame)の二つが考えられている。J.C によれば fame 説の方が新説。もし hruod 由来とするなら,Robert (♂) の前半要素と同じである。
 後半 lind については,別のページ参照。

 Rosalind の語源と語意が誤解されはじめた時期は不明。とりあえず中世頃のイングランドでは,ラテン語 rosa linda (美しい薔薇)だという民衆語源が通用していた。
 この名は『お気にめすまま』(シェークスピア,1599)のヒロインの名として有名となった。男装して女性に惚れられる魅力的な美人である。
 Rosalyn, Rosaline, Roseline, Roslyn, Rosalinda, Rose など,変形や別綴りが多い。ドイツ語形は Rosalinde 。

◇Rosamund, Rosamond(ロザムンド,ロザモンド)

 区切りは rosa-mund (mond) 。
 後半は protection の意で,どちらかといえば男性名に多く使われた要素。この後半要素を持つ男性名は Edmond, Esmond, Faramond, Grismond, Raymond など。女性名は Rosamund と Clarimond くらいしか見つからない。

 Rosamund も Rosalind と同様に語源と語意を誤解された。ラテン語で rosa munda (語意 pure rose) あるいは rosa mundi (語意 rose of the world) とみなされ,それが通説となった。
 H&H によれば,rosa mundi は聖母マリアの称号の1つでもあるらしい。

 Rosamund はイギリス王ヘンリー二世の妾 Rosamund Clifford (ロザモンド・クリフォード。1176年死亡)の物語によっても有名である。

 王は妾の所在を正妻に知られぬよう,迷宮風に作った館にロザモンドを隠した。しかし王妃は根性で迷路をクリア。ロザモンドに剣で死ぬか毒で死ぬか選べと迫る。不幸なロザモンドは毒盃を仰ぐ……。

 ……しかしこれは伝説で,史実ではないらしい。王妃は当時軟禁されていて,殺害は不可能だった。ただし後年,王妃がロザモンドの墓を暴き,遺体を放り出したのは事実だったらしい。

*記: 2000/2/13 (修正6/21)


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