■ギリシャ語の phil- 要素
ギリシャ語 philein「(友)愛する」またはギリシャ語 philos「(友)愛する」に由来する phil- は,いくつかの人名に見られる要素である。この要素を含んでいて,現在もよく使われる現役の名として,Philip (♂) (そして Philip の各国語形)がある。Philip の後半要素は híppos「馬」。全体で「馬を愛する者」の意の人名として使われてきた。
また, phil- が後半要素になった人名には Theophilus (♂) がある。
phil-, philo- は英語にも入っている。philosophy「哲学」はギリシャ語 philosophíā (phil-「愛」+sophía「智」)に,philology「言語学」はギリシャ語 pilologíā (phil-「愛」+logós「言葉」)に由来している。
philos 由来の英語の連結形には phil-, philo-「愛好する」,-phil(e)「~を愛好する(者)」,-philia「~傾向,愛好,(異常な)嗜好」」がある。 例としては
等がある。-philia (フィリア)についてはすぐ二つの変態趣味が頭に浮かんだが,忌まわしいので書くのをやめておこう……
また,確かラテン語の学名では -phila が「~を好む」という意味になると,どこかで読んだ。植物の「カスミソウ属」の学名 Gypsophila は「石灰(の多い土)を好む」という性質からつけられ,つまりラテン語 gypso-phila つまり「石灰質」+「好む」の意である,とも読んだ覚えがある。しかし20年くらい前の記憶なので,ちょっと自信がない。
gypso- 要素はラテン語 gypsum「石膏,石灰」「石膏像」由来だろう。gypsum はこの綴りのまま英語の gypsum「石膏,ギプス」になっている。(ただし gypsum 自体の語源はセム語にあるらしい)。
カスミソウは英名も gypsophila (ジプソフィラ)だが,なんとなくこの綴りを見ていると,
「ギプス好み」
とかいった架空の変態趣味が連想されて鬱である。
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