神代植物公園のバラ

レディ・ヒリンドン[Lady Hillingdon] (T)-----[作出] 1910年,イギリス [撮影] 2022年5月15日,都立神代植物公園

レディ・ヒリンドン2022

 開花時は剣弁咲きか半剣弁咲きで,開くうちに表現しがたい八重咲きになる。
 開き始めの花 (2002年5月撮影・520×390/32KB)
 茶色がかった淡い杏色からクリーム色へのグラデーションが美しい花。花には紅茶(ティー)に似た芳香がある。(T) は「ティー系」を意味する略号。
 砂糖をうんと入れて甘くしたストレートティの香り。
 これと同じ香りの紅茶を飲んだら絶対甘いはず。
 そのような香りがある。

 神代植物公園には2022年5月の時点で「レディ・ヒリンドン」が二か所,「つるレディ・ヒリンドン」が二か所植栽されている。
 このページ後半のデータ部分に書いた「株の大きさ」は書籍からの引用で,神代植物公園ではそれほど丈が高い株がない。バラ園,オールドローズ園の木立性の株はどちらも丈60cm程度である。このバラは茎がか細いので,倒伏しないように低めの丈で剪定されているのかもしれない。


 レディがつくからには Hillingdon は姓名のような気がする。しかし手持ちの姓名辞典では見つからない。Hilling 姓,Hillings 姓はある。これらは古代英語で hill-dweller (丘の居住者)の意味を持つ姓だそうだ。
 もしかすると -don は英語の地名によくある -don (「丘」の意)かもしれない。Snowdon は「雪の丘」, Huntingdon は「漁師の丘」の意味になる。
 しかし仮に Hilling-don だとすると 「丘の居住者の丘」とかいうクドイ意味になってしまうので,全然見当外れかもしれない。

 ちなみに London は古代英語由来ではなく,ケルト語由来らしい。「荒地」の意とする説,ケルト語 Londinos 「勇者の地」とする説など,諸説ある。

 20世紀初期に作られた古い品種だが,現在も人気は衰えない。
 日本でも古くから愛好され,「金華山」の名で呼ばれた時代もあった。
 ある本に「明治時代には金華山と呼ばれていた」と書いてあったのだが,明治は明治44年(1911年)で終わっている。ということは,作出年かその翌年にはこの品種が日本に入っていなくてはならないが……
 もし,それが本当なら,輸入業者はきわめてたくましい商魂を持っていたに違いない。


[作出] 1910年イギリス,ロー&ショーヤー (Lowe & Shawyer)
[交配親] Papa Gontier × Mme. Hoste
[花] 杏黄色,径11cm,半剣弁咲き(盃状咲きと書いてある本もある)
[花期] 四季咲き性
[葉] 赤みがかった濃緑。茎は細く優雅にカーブし,葉よりも赤みが強い
[株の大きさ] 1.0m
[香り] 強い。極めて素晴らしいティーの香り。
[別名] 金華山
[神代植物公園での花期] 2022年は4月29日で咲いておらず,5月13日でかなり傷んでいた。多分5月第一週に見頃だった。しかし四季咲き性らしいので,5月中旬以降にまた開花する可能性はあると思われる。


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Last Update 2022.5.18