神代植物公園の花

ジンダイアケボノ [Prunus×Yedoensiis Matsum. cv  Jindai-akebono Hayashi et Nishida cv. nov]---[撮影] 2003年4月4日,都立神代植物公園

ジンダイアケボノ(2003年4月)

 神代植物公園での花時は4月始め。三年ほど観察してみたところ,この公園では,「ソメイヨシノより二,三日早く開花する」ように見受けられる。つまり,ソメイヨシノの満開時を狙って公園に行くと,ジンダイアケボノは既に傷んでいることが多い。

 植物会館前から東に伸びる,公園北側のメインストリートを東進すると,ハギ園の手前にトイレがある。そのトイレ脇に植えられている。

 ジンダイアケボノは出自がはっきりしない桜である。
 まず,ワシントン市が東京都に「あけぼの」という園芸品種の桜を贈ってくれた。これはソメイヨシノの実生から,ワシントンで選抜された品種だった。
 しかし,日本にも「曙」という名の,全く別の品種の桜があった。紛らわしいため,日本では「アメリカ」と変名した。

 ワシントン市が贈ってくれた「アメリカ(旧名あけぼの)」の枝は植物公園で接木され,成長後に「築山」(大芝生西側の丘)に植栽された。この「アメリカ」は現在大木となり,毎年見事な花を咲かせている。「アメリカ」の花はソメイヨシノより大きく,ややピンク色が濃い。

 一方,「神代曙」は,時期は異なるが,やはりワシントンから贈られてきた「アケボノ」の枝を接木して育てたものだった。しかし,日本で「アメリカ」と名づけられた「アケボノ」とは花が違った。「神代曙」の花は「アメリカ」と比べて小型,ソメイヨシノと大差ない大きさである。また,「アメリカ」には見られない,濃いピンクのボカシが入る。
 どこで名前の取り違えが起きたかは不明。しかし完全に別品種ということで,林弥栄氏によって「ジンダイアケボノ」と命名された。


 上の写真は「じんだいフェスタ2003」開催期間中,4月4日金曜日の夜7時頃に撮影した。土曜日には雨が降ると予報されていたから,仕事帰りに必死で公園を目指した。

 神代植物公園は都立公園なので,平常は夕方で観覧が終了する。しかしここ数年,「バラ園ライトアップ」等,観覧時間を延長する行事がたまに行なわれるようになった。昔は桜が満開でも,絶対に「月曜休園」を貫いていた公園なので,時代の移り変わりを感じる。

 観覧時間を延ばし,園内の一部を入場可能にすれば,観客数の増加に伴って増収になるだろう。しかしライトアップ用の機材,立ち入り禁止区域の通行止めなどにかかる費用,監視員・職員の人件費,ごみ処理の費用……等々,支出も多くなるだろう。
 黒字になっているといいなぁ,と思いつつ,夜桜を楽しませてもらった。

[参考書籍等]
 じんだいフェスタ2003の立て看板(学名・説明等)
 神代植物公園(浅野三義・鳥居恒夫,東京都公園文庫,1981年,2002年改訂版二刷)


■過去に写した「神代曙」の写真(樹の全景)


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Last update 2003.4.5