奇妙な黄昏/過去ログ

フィルムケースを知らない世代 ---[記録] 2015/10/4

 私は大学病院内に入っている下請け業者のパートをしている。
 A「中央材料室で器具の洗浄・滅菌」
 B「オペ室で術間・術後清掃,手術用アイテムや薬剤補充」
 このABの作業を1週~2週単位で交互に行う。
 そして先週はオペ室勤務の遅番だった。(遅番は11~20時勤務)
 金曜の夜7時過ぎ,ドクターが作業室に現れ,「フィルムケース」を御所望になった。
 (作業室にはオペ用機材や消耗品を保存する棚がある)

 オペ室の撮影は現在デジカメになっているので,フィルムケースは存在しない。
 しかしドクターが作業室の棚にあるはずと思って足を運ばれたわけだから,似たものがあるのだろう。
 ……もしかして「ピオクタニンコップ」かな?

 似たようなものはこれですが,とお渡ししたところ,「ああこれだ」ということになった。
 その時作業室には私の他に30代前半の同僚(勤務5年目)がいた。しかし彼女は何を用意したら良いかわからない,というか「フィルムケースって何?」みたいな雰囲気だった。

 そうか。この人は世代的にフィルムのカメラを知らないんだ。
 後で聞いてみると,やはり知らないとのこと。写ルンです系のカメラは使ったことがあるそうだ。

 一方50代前半の私は写ルンです系のカメラは一度しか使ったことがない。
 (若い頃は写真を撮る趣味が全くなかった)

 あれは確かカメラごと現像に出して,写真とネガが戻ってくるんだったっけ?
 となると「フィルムケース」を見たことがないのも当然か。

 彼女の父親は私より3つくらい年上だというがほぼ同世代だ。自分の若い頃を思い出してみれば,確かにカメラが趣味でもない限り,高価なフィルムカメラを買う世代ではなく,映像を残すなら家庭用ビデオ,の時代に入っていた気がする。
 私は父親がカメラ趣味だったので幼い頃からフィルムケースを見知っていたが,初めて自分用に買ったのはデジカメだったもんな。今30代前半なら完全にデジカメ→ケータイ→スマホの流れで静止画を撮ってきたはずだ。

 世代差って凄いものだな,としみじみと思った。

 でもあのドクターは結構若かったな。
 世代的に良く「フィルムケース」を知っていたものだ。

 まあ今どき医学部に入れるのは
「頭が良くて実家が金持ち」
「代々開業医の家庭で金持ち」
 あたりが多数派だ。

 お祖父さんが高価な一眼レフ愛好家だったとか,商売道具としてフィルムカメラが必要な家に生まれたとか,そんな感じの背景があって「フィルムケース」を知っていたんだろう……と妄想の翼を広げてしまった。

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