■語呂の問題?
6月初め,歩道の花壇のガクアジサイが綺麗だったので,スマホで撮影していたところ,少し離れた所に「エロディ」と書かれた名札を見つけた。名札近くにはユリのような植物があるが,花が咲いていないので詳細不明。
このカナ表記だと綴りは多分 Elodie だろう。
まさかエロな日,とかいう意味ではないだろう。
後で検索してみよう。
……と思ったのに忙しくてすっかり忘れ果てて,画像フォルダを整理してやっと思い出した。
やはり検索してみると綴りは Elodie で,ピンクの花が咲くスカシユリの品種名だった。
また Elodie はスウェーデンのベビー用品メーカーの名前でもあった。
(Nordic Names Wiki によれば Elodie がデンマーク・スウェーデン・フィンランド・ノルウェーで使われ得る女性名)
H&Hの辞典では Elodia の綴りで項目が立ててあり,西ゴートの女性名由来のスペイン語名で,ali- (語意 other, foreign) + od (語意 riches, wealth, prosperity)の二要素で成立したものと述べられている。また9世紀にこの名を持つ殉教聖人がいたことに触れている。
その殉教聖人とは Wikipedia によると Nunilo and Alodia で,そこから各国語版の Wiki に飛ぶと,国によって聖人名の表記順が違うことがわかる。(Nunilona
i Alòdia /Alodia y Nunilo /Alodia eta Nunilo /Élodie et Nunilone /Nunilone
e Alodia /Nunilo e Alódia /Алодия и Нунила)Nunilo が先なのが3で Alodia が4,僅差ではあるが,Alodia
が先に書かれる割合が高い。
ちなみにカトリック・オンラインでは St. Alodia の項しかなくて,Nunilo は説明文中で「 Alodia の姉妹」と書かれているだけだ。
彼女たちは宗教上の問題で殺害された「双子の姉妹」で,どちらかがメインでどちらかが添え物というわけでもない。
しかし人名としての使用具合は Alodia (Elodia, Elodie) の方がかなり多い,ような気がする。
同じ日に生まれて同じ日に死んだはずの双子がいて,片方の名は千年を超えて現役,片方はそれほどでもないという不公平。
この差は,響きや語呂の問題か?
欧米語の発音の難易度はわからないが,もしアロディアとヌニロの二択だった場合,私もアロディアを選ぶかもしれないし……
ところで Wiki やその他ネットで検索したが,聖人名の Nunilo は語尾の変化があるものの,途中までの綴りは一定して Nunil- だった。
しかし,私の持っているH&Hの辞典(A Dictionary of First Names /Patrick Hanks and Flavia
Hodges, Oxford University Press 1990)では,どういうわけか Nuncilo と,途中で c が入っている。
Nuncilo の綴り自体は検索でヒットするが,聖人名として出てくるのが A Dictionary of First Names の Web
公開版,またはそれをまるまる見事なまでにコピーアンドペーストしたっぽい赤ん坊命名サイトのページしか見つけられない。
この c は何なんだろう。
[記] 2020/8/16
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