■フォルモサ・フォルモスス
Formosa (フォルモサ) は台湾の旧称,あるいは雅名。
大航海時代,ポルトガル船の船乗りの一人が「Ilha Formosa(イラ・フォルモサ)」(語意・「美しい島,麗しい島」)と呼んだことに由来する――という伝承がある。
現在も「フォルモサ」は台湾の企業名やテレビ局名に使われている。
Formosa の語源はラテン語の形容詞 fōrmōsus 「形の良い,美しい」である。
formosus 由来の副詞 fōrmōsē は「美しく,優しく」。
また,formosus はラテン語 fōrma に由来する。
ラテン語 fōrma は
1. 姿,形,外観. 2. 美(形) 3. 顔,容貌. 4. 様子, 性質,成立. 5 形像, 模像, 6. 図形. 7. 略図. 8. 現象, 形態. 9. 模型,型,印. 10. 理想, 典型. 11. 形容
――(『羅和辞典(研究社, 1952年(2000年第34刷)』)
と,非常に多数の意味を持つ語であり,fōrmō 「形成する,製造する」,fōrmula 「規則,原則,契約」等の語源になっている。
fōrmō からは fōrmātio 「形成すること,組み立て」, fōrmātus 「形成された,形づくられた」が派生している。
現代英語の中にも fōrma を源とする単語は多い。
form「形 / 形作る」,formula「公式,常套手段」はラテン語 fōrma ,format「形,体裁,フォーマット」は ラテン語 fōrmātio
が語源だ。
フォームやフォーミュラ,フォーマットは外来語として日本語にも定着している。
ところで,ローマ教皇の一人が,Formosus の名を持っていた。
彼の名はどう見てもラテン語 fōrmōsus 由来に見えるし, fōrmōsus が語源でなければ何が語源なんだと言いたいところだが,そのように断言してある辞典が確認できないので不明。
この教皇は896年に死んだが,死後8ヶ月で墓を暴かれ,「死体裁判」にかけられたことで有名である。
もしこの縁起でもないエピソード持ちの教皇がいなかったら,Formosa は中世あたりで女性個人名として使われたかもしれないのに――と妄想した。
昔「伝説巨神イデオン」というアニメに,「フォルモッサ・シェリル」というキャラクターが登場した。(フォルモッサが姓名・シェリルが個人名)
彼女の姓は台湾のフォルモサとは多分関係ないだろう。
しかしこのアニメの監督は「既存の地名や人名の一部を変更し,カタカナ文字列をでっち上げ,キャラクターを命名する癖」があった。
だから彼女の姓の元ネタが台湾の雅名だった,という可能性は,ある。
[記] 2011/3/27
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