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アカーキー
Akaky (Akakii? Акакий?)

 ロシア文学『外套』(ゴーゴリ)は奇妙で暗い物語である。現代国語の教科書に載っていて無理やり読まされた。その時までに『罪と罰』を読んでロシア文学に悪印象を持っていたため,『外套』を読んだ時点で,それ以後ロシア文学作品に立ち向かう気力が萎えてしまった。

 貧しいアカーキー・アカーキエヴィチは外套を追いはぎに奪われる。取り戻す努力をするが空しい。そして亡霊と化し,「外套をよこせ」と人を襲うようになる。襲撃のターゲットは外套奪還に助力してくれなかった有力者だった……気がするが,昔のことなのでちょっと忘れた。

 アカーキー・アカーキエヴィチの英語綴りは『欧米文芸登場人物事典』によれば Akaky Akakievich 。H&H にも,『岩波ロシア語辞典』にも載っていないため,原語綴りはわからない。

 しかし検索をかけてみたら

Революционер Акакий Акакиевич

というページがあった。「丈の長めの上着を持ち上げている男」の挿絵もある。
 Акакий Акакиевич をローマ字アルファベットに置きかえると Akakii Akakievich となる。-ий の転写法は何通りかあって Akaki, Akakii, Akakij, Akakiy ともできるらしいし,英語だと -ий をまとめて y に変換することもあるようだ。
 このページはどう見ても『外套』関連の内容に思えたが,ロシア語は全然読めないのでやはり確かなことは何も言えない。

 以前ロシアの歴史的人名を扱った海外のサイトがあった。かなり膨大な人名リストを載せていたが,語源抜きで語意しか書いていなかったのでイマイチだった。しかしそのサイトが存在した当時,読み取って保存したデータでは,Akakii は unmalicious (悪意のない)の語意と説明されていた。

 英-ギリシャ語辞典を見ると,

akakía― s.f. 1.acacia. 2. guilelessness
 (1 アカシア 2 誠実)
ákakos― a. harmless, guileless
 (無害の,悪意がない,誠実な)

 というのがある。harmless の語意は「無害の,悪意がない」だから,ギリシャ語の ákakos と Akakii は関係がありそうに見える。

 なおギリシャ語で Akakios と表記されるキリスト教関係の著名人が,4世紀から5世紀にかけて3人存在した。彼らの名はラテン語・英語・独語表記では Acacius と綴られる。St. Acacius は十四救難聖人の一人でもある。
  Akakii は Akakios 由来かもしれないが,そのへん不明。

 それからアメリカの検索エンジンで Akaky を調べてみたところ,『外套』の英題は Overcoat らしい。
 オーバーコート……まぁそうとしか訳せないとは思うけど……
 なんかちょっと気分的にコケる語感である。

*記:2001/04/08

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