ラテンの鷲
Aquila
Aquila はラテン語で eagle,「鷲」の意である。aquila はアングロノルマン語 Aigle となり,これが英語の eagle になっている。
聖書「使徒行録」に登場するユダヤ人のテント製造者が Aquila の名を持っている。GRS によればこの人はギリシャ語の聖書では Akulas
,ラテン語訳の聖書では Aquila と書かれた。
また140年頃に完成したギリシャ語訳聖書を,訳者の名を冠して「アキュラス訳」と呼ぶ。この訳者名もギリシャ語で Akulas, 英語では Aquila
と書かれる。
Akulas は ギリシャ語 'ακυλοσ「ドングリ,ウバメガシの実」に由来するらしい。その推説が正しければ,Aquila と Akulas の語意は少し離れている。ただし aquila は,ラテン語 aquilus「暗色の,黒褐色の,黒色の」と同源と推測されてもいる。
このあたりまで辞典を読むと,素人としては,「きっと黒褐色は鷲の羽根の色なんだろう。鷲の羽根の色はドングリの色に似ていると言えないこともないし,結局は関係があるかもしれない」と考えるが,まったく裏付けがないので,話半分に読んでほしい。
羅和辞典で aquila の近辺を見まわすと,ローマの氏族名 Aquil(l)ius が存在する。Aquilianus は「(氏族名)Aquilius の」の意。また aquilo「北風,嵐,北」がある。Aquilo と大文字で始めると「北風の神」。ギリシャ神話のボレアース(Boreas) に相当するローマの神である。
aquila そのものはどうかと言えば,「ワシ,ワシの徽章(軍旗),建築用語で切妻の三角面」の意と書いてある。手持ちの羅英辞典だと「 eagle, standard of a Roman legion 」となっている。この場合の standard は「水準」ではなくて「旗,軍旗」であろう(軍旗を表す英語の言葉には banner もある)。
ラテン語 aquila と同じ語意を持つギリシャ語を探して見た。aetós (αετοσ) が相当しそうだ。aetós の語意は「ワシ,旗印としてのワシ,トビエイ,ペディメント(pediment 。三角形の切妻壁)」である。
アドレスを忘れたが,「A Dictionary of Period Russian Names」という英語のページがあった。ここに,Aetii
という男子名が載っていた。語意は eagle だそうだ。
このページが信用できるのかどうか不明ではあるが,Aetii の綴りには aetós の気配が感じられ,もしやという気がする。
H&H の辞典の Ezio (♂) の項に,
Aëtios, a Late Greek name derived form Greek a(i)etos eagle.
という箇所がある。
どうも前記のサイトの Aetii はこの Aëtios というギリシャ語名に関係があるような気がしてきた。
しかし例によって,気がするだけで,確認はできない。
*記:2000/06/30(修正2000/11/30,2002/03/02)
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