アルとエルの憂鬱
Elfleda
ゲルマン由来の人名「アルなんとか」「エルなんとやら」は悩ましい。
この「アル-」「エル-」の語源と思われる語が四つほどあって,いろんな語意が考えられるからだ。
1 noble の意
athal, adal (Old German)
æthel (Old English)
2 elf の意
alfi (Old German)
ælf (Old English)
3 all の意
ala (Old German)
4 foreign の意
ali (Old German)
1~4の言葉は時代が下るにつれ,al- el- へと変化した。その結果見分けがつかなくなった。綴りが変わったことで,別々の名前が融合・統一されてしまった例もある。
例えば Elfleda という名は,二つの古英語女性名に由来する。
Æthelflæd (語意/noble-beautiful)
Ælflæd(語意/elf-beautiful)
前者は貴婦人の名,後者は修道院長の名として歴史に残っている。このような綴りなら,何の要素で構成されたか一目瞭然だ。しかし綴りと発音の変遷により,Elfleda
の出自はあやふやになってしまい,「どちらにも由来する」といったアバウトな説明をするしかなくなったのだった。
*記:1999/12/19 (修正6/21)
[追記] 2009.12.20
『ランダムハウス英和辞典』によれば,「長音の ae は1250年頃まで使用され,その後 e に変化」「短音の ae は1150年頃に廃れ a
か e に変化」したそうだ。
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