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ブラドリーと肥料
Bradley
Ashley, Harley, Kingsley, Langley, etc.


「ローマの休日」という映画がある。ある程度の年齢の人はよく知っている。しかし知らない人が読むと何が何やらなので,ちょっと説明する。
 ヒーローの名は Joe Bradley (ジョー・ブラドリー)。アメリカ人だが,ローマで働く新聞記者である。イタリア勤務が面白くないらしく,仕事に不熱心だ。

 だが彼は偶然,「お忍びで町に出た王女様」を拾う。一世一代の特ダネを狙えるチャンスである。そしてアメリカに凱旋帰国するチャンスである。そこで世間知らずの王女様を欺いて親切げに振る舞い,密着取材を試みる。
 職業を問われて「販売の仕事」とでまかせを言うヒーロー。王女様はさらにツッコミを入れる。

「何を?」
「……」
 ヒーローは一瞬詰まる。その顔のアップに,「馬のいななき,馬が通りすぎて行く音声」が重なる。
「……肥料や薬品を」

 昔に見た時は,「馬=馬糞=肥料」という連想なのかと思っていた(ヒーローの視線の先に馬糞が見えたのではないかという妄想もしていた)。
 しかし Bradley は古代英語で broad-meadow (clearing, glade) の意を表す言葉に由来する。つまり「広い牧草地(開拓地)」だ。

 となると,もし日本的に翻案するとしたら,

「広畑さん,何を販売なさっているの」
「肥料を……いえ(昔ながらの有機じゃなくて!*)化学肥料です化学薬品です」

 てな感じで,姓名の語意も含めた冗談だったのかな,という気がする。
 英米の人が Bradley と聞いて姓名の語意がすぐわかるとしたら,あれは笑うポイントだったかも……でも,不明である。

(*家にある廉価版のビデオを見ると,ジョーは「ケミカルケミカル」と妙に繰り返している。だから,こんな感じを受ける)

  meadow の意の古代英語 leah に由来する姓名は多い。
 Bradley は地名から姓となり,現在よく使われる「人名(ファーストネーム)」にもなっている。姓名の人名転用例はあまり人名表に入れなかったが,

Ashley (♂♀)……(ash-meadow)
Harley (♂)……(hare-meadow)
Kingsley (♂)……(king's meadow)
Langley (♂)……(long-meadow)
Lea, Leigh (♂♀)……(meadow)
Oakley (♂)…… (oak-meadow)
Shirley (♂♀)……(shire-meadow)
Stanley (♂) ……(stone-meadow)
Wesley (♂)……(west-meadow)

等が人名として使われている。

 しかし Beverly, Beverley は古代英語で beofor-leac (bever-stream) の意。
 -ley で終わっていれば何でも meadow (clearing, glade) の意味だと早合点してはいけないようだ。


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