■Justus
ラテン語 jūstus は「正当な,公正な」「法律上の」「道理のある」等の意の言葉。この語は英語の justice「正義」の語源でもある。
ラテン語 jūstus は jūs「法規」「律,法」「特権」に由来する。
そしてラテン語 jūs はラテン語 jubeō「命ずる,支配する」「決定する」「取り決める,宣言する」に由来。
ラテン語 jūs「法規」「律,法」「特権」を語源とする英語に jury「陪審(員)」がある。jūs に由来するラテン語 jūrāre「誓う」が古代フランス語を経由して英語になった。
しかしラテン語にはもう一つ別の jūs がある。それは「スープ,煮出し汁」の意をもっている。こちらは古代フランス語 jus を経由して英語の juice になった。*フランスでは jus の綴りのまま現代語として存在する。
こちらの jūs は印欧語根で「まぜる」の意の言葉に由来するらしい。古教会スラブ語の jucha「スープ」も同系だと『スタンダード英語語源辞典』にあるので,ロシア語に似たような言葉が残っていないかと思って探してみた。
すると юшка (yushka) という単語があった。これは「魚の煮汁,料理の煮汁」の意を持つ方言だそうだ。見た感じ関係がありそうだが,真実は不明。単に似ているだけかもしれない。興味が出た人は自分で調査してほしい。
ところで『マイスター独和辞典』を見たら Jus という綴りの語が二つあった。片方が法律系の語意,片方がジュース系の語意だった。
どうもこれらもラテン語 jūs の「語意二本立て状態」に遠因があるように見えるが,そのへんは調査不能である。
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