3世紀の殉教聖人 Alphius のイタリア語形。伝説によれば St. Alphius は舌を裂かれる拷問を受けた。
彼の名は wheat (小麦) の意のギリシャ語 alphos か,white (白) の意のラテン語 albus に由来する。
英語の wheat 「小麦」と white 「白」は同系語で,どちらも語源を遡ると「白いこと」を意味する印欧語根に到達する。(小麦は白い粉になるからだろう)。
H&H によれば「Alfio は典型的なシチリアの名前」とのこと。ただH&Hの辞典が既に30年以上に出版されたものなので,2022年現在の状況はわからない。なお, イタリアのシチリア州には Sant'Alfio (サンタルフィオ) という自治体がある。
イタリア語版Wikipedia に「Alfio, Cirino e Filadelfo」の項があり,英語版に切り替えると 「Alphius, Philadelphus and Cyrinus」のページに移動する。シチリア語版は Sant'Arfiu, Cirinu e Filadelfu,スペイン語版は Alfio, Filadelfo y Cirino, ロシア語版は Альфий, Филадельф и Кирин だ。地域によって聖人の並び順が変わるのは何故なのだろう。イタリアとシチリアの人は Alfio 以外では Cirino 推しなのか。
笑えるのは「スワヒリ語版」で,Alfio na wenzak 「アルフィオと同僚(自動翻訳。しかし正しくは兄弟)」。2人が「その他大勢」扱いだ。
しかし Wikipedia によればCyrinus は生きたまま油で煮られ,Philadelphus は火あぶりになったとの事。
「ありきたりの火あぶり」よりも「油で煮られる拷問話」のほうがインパクトがあったので,イタリアとシチリアの人が Cyrinus 推しなのだろうか。
もしかしたらシチリアにはもう少し詳しい,あるいは盛大に脚色された「殉教伝説」があって,その中で Cyrinus が Philadelphus
よりも好青年に描かれていたりするのかもしれない。
たとえば兄弟をかばって一番先に処刑されたとか,迫害されていた母親を一番慕っていたとか。
Sant'Alfio (サンタルフィオ) 自治体に「郷土の伝説」みたいな本があってもおかしくないよな。
まあ,もし存在していたとしても見る機会があるはずもないのだが。
[2002.4.16]
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