神代植物公園の花

タチバナ [Citrus Tachibana] ミカン科/ミカン属------[撮影] 2022年5月15日,都立神代植物公園

タチバナ・2022年

[上の画像をクリックすると花のアップ画像になります。720×720/512KB]

 2022年5月15日はバラフェスタ開催中で,土日の「早朝開園」が行われていた。
 開園は8時だったので,8時5分くらいにゲートに到着したが,既に50人ほど並んでいる。
 券売機が2台しかなく,しかもそれが初見の客にわかりにくい画面タッチタイプなので,そこで渋滞してしまうようだ。
 園内に入れたのは8時25分だった。

 朝早く家を出るため朝食抜きだったので,つつじ園の手前にある通路のベンチに座ってコンビニのサンドウィッチを食べ,スマホを自撮り棒にセットするなど撮影準備をして歩き始めたら,白い花の咲く木を見つけた。かなりの大木だ。
 木の根本にあるネームプレートで「橘」の木だとわかった。
 タチバナの実が生って目立つ色合いになるのは冬。冬に公園に来たことがない私は今まで全くこの木の存在を知らなかった。

 とても良い香りの可愛い小さな花だ。見る角度によってはオモチャのブローチ (290×200/72KB) のように見える。
 蕾の様子 (390×520/224KB) も愛らしい。
 もし来年以降もバラの時期に公園を訪れることがあれば,タチバナの木も忘れずに見物しようと思う。

 ただ,植物図鑑によると花期が「初夏」あるいは「6月」等と書いてある。
 温暖化の影響か,2022年が特別暖かくて花が早かったのか不明。

 山渓ポケット図鑑『秋の花』によると「日本で唯一の野生の柑橘類」。

 古事記では「非時香菓 (ときじくのかくのこのみ)」が橘のことと記されているらしい。
 しかしそれは「常世の国」から十年掛かって持ち帰られた不老不死の霊薬という設定の実。
 日本の野生の柑橘がそれに相当するとは思えないので,何かの誤解だろう。

 そういえば「非時香菓」を題材とした漫画に「時じくの香の木の実」(山岸凉子・1985年) があったな。
 電子書籍で読み返してみようかな。
 異母妹に手を出して両性具有の子を生ませる兄,その兄を慕っていた同母妹の狂霊,その狂霊が両性具有の子に「力を与えよう」と目論むセリフ,そして狂霊の背景に描かれた原爆雲らしきもの。
 とても迫力がある漫画だった。
 でも凄く深い内容なのに,私の心に刻まれたのは,とあるコマの手書き文字。

 すごいわ! 割り込んだのね。

 あの大笑いした手書き文字がコミックスでも消されずに残っているといいなぁ。
 この「割り込み」は狂霊が「自分が既に人間ではなく肉体がないこと」に気づく,重大な「転」の展開に不随するものなので,不可欠ではあるのだが,何も割り込みで気づかなくても良かったはずなのだ。例えば異母妹に平手打ちを食らわす等でも。
 それをあえて「割り込み」にする,山岸凉子の素晴らしい作家性。
 ああ,未読の山岸作品を読みたくなってきた。
 橘の花を見ることによって思い出が蘇り,電子書籍に大散財してしまいそうだ。


[花] 径2cm,白く香りが良い
[葉] 互性,楕円状被針型で長さ3~6cm
[果実] 直径2~3cmの扁球型


花色散歩

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Last update 2022.5.16